一級建築士で年収300万円。年収を上げる一番いい方法は?
一級建築士を持ちながら年収300万円の30代設計者の相談。年収が上がる可能性と、準大手の設計事務所・内装会社の建築部門・発注者側という3つの行き先を整理します。

ご相談者の情報
- 年代
- 30代前半
- 職種
- 意匠設計
- 業種・勤務先
- アトリエ系設計事務所
- 経験年数
- 約9年
- 保有資格
- 一級建築士
- 現在の年収
- 約300万円
- これまでの経歴
- 大手ハウスメーカー 約5年 → アトリエ系設計事務所 約4年
新卒で大手ハウスメーカーに入り、5年近く働きました。設計職での採用でしたが、実際は確認申請、技術部門、現場監督、そして支店の人員の都合で営業まで、ひと通り経験しました。そこから設計に戻ったところで「このままでいいのか」と考えるようになり、退職しました。
今は少人数のアトリエ系設計事務所で意匠設計をしています。代表のスケッチを図面に起こし、申請図書をつくり、模型もつくって、現場にも行きます。木造を中心に、公共施設や店舗の内装まで幅広く関わらせてもらっています。在籍して4年ほどで一級建築士も取りました。
ただ、年収は300万円ほどです。同年代と比べて低いという自覚はあります。裁量があるようでいて実際にはそれほどなく、年齢に見合ったマネジメントの経験もありません。経験した案件数も多くはありません。
大手とアトリエという両極を経験したせいか、その「中間」にどんな会社があるのかが分かっていません。ゼネコンの設計は毛色が違うし、それこそ分業のイメージもあって考えていません。デベロッパーは設計を外に発注する立場なので自分の希望とは違う気もします。30代半ばを超える前に、どうにかしたいと思っています。
専門家のアドバイス
まず、年収は上がる可能性が高いです
先に結論からお伝えします。今の年収から少なくとも300万円ほど上がる可能性は、十分にあると思っています。行き先によっては700万円前後という水準も、決して非現実的な数字ではありません。
理由は単純で、一級建築士を持っていて、意匠設計の実務経験があって、30代前半という条件が、いま採用したい企業側から見て魅力的だからです。
ただし、注意点もあります。平均年収の高い大規模設計事務所ほど「直近でどれくらいの規模の建物を担当したか」を条件にしていることがあります。5,000㎡クラスの実績を求められることもある。ですから最終的には、ポートフォリオを見せていただいたうえで、どのレンジが狙えるかを詰めていく話になります。
選択肢は、大きく3方向あります

① 準大手〜大手の設計事務所
資格と実務があるので、規模の条件さえ合えば十分に可能性があります。組織が大きいほどコンプライアンスの意識も高く、働き方が整っている傾向もあります。「大手は分業だから自分の手が動かせない」というイメージは、その傾向はあるものの事務所によって異なるため、まず話を聞いてみる価値があります。
② 内装ディスプレイ会社の建築部門/再生建築を手がける会社
いま面白い動きが出ているのがここです。内装の空間デザインを手がける会社が建物全体をデザインしようとすると、躯体を触る段階でゼネコンが間に入り、それでは自分たちのやりたい空間に責任を持ちきれない。だったら躯体から一気通貫でやろう、ということで、建築の部隊を新しく立ち上げる会社が出てきています。
既存の建物を再生する会社も同じで、建築も内装もやってきた人が、いちばん重宝されます。相談者様のご経験はそのまま当てはまります。
③ 発注者側
デベロッパーは設計を外注する側なので違うと感じておられましたが、事業主の視点で建物の企画側に回ることができますし、また事業や用途によっては、デザインに踏み込む場合もあります。今回は優先度を下げてよいと思いますが、選択肢としては残しておいてください。
これからやるべきこと

まず、いきなり企業の求人に応募するのは、おすすめしません。
転職エージェントには、求職者と企業を別々の担当が見る分業型と、ひとりが両方と直接話す両面型があります。ご自身のように「年収と働き方だけでは測れない価値観」を持っている方は、後者のほうが合います。
両面型のエージェントの場合、企業を担当しているエージェントと直接話すため企業情報を深く知っていることが多く、価値観までマッチした企業の提案をしてくれることが多いです。また、求人へ正式に応募する前に、採用を検討できるか、年収がどれくらいになりそうか、希望する働き方が叶いそうかなどを事前にヒアリングすることが可能なケースもあります。
将来は独立も視野に入れておられるとのことでした。それなら、なおさら今の時期に一度、自分の市場価値を測っておくことをおすすめします。
転職するかどうかは、そのあとで決めればいい話です。 測ってみた結果、今の事務所で設計を続けるという結論になっても、それは失敗ではありません。複数の選択肢のある状態で自分が選択した、ということですから。